『中国(チャイナ)4.0』

 著者のエドワード・ルトワック氏は、戦略評論家というだけあって面白い分析だった。
 大国は小国に敵わないという『逆説的戦略論(パラドキシカル・ロジック)』で有名とのこと。ざっと言えば、「大国が小国を攻撃しようとすると、周辺諸国が小国に加担するので、結果的に孤立した大国が負けてしまう」という理論。まさに今の支那がこの状態にあると言うのだ。
 著者は、建国から今に至るまでの中国(中華人民共和国)の国家戦略の変遷を「1.0」から「3.0」で区分けする。建国、すなわち第二次大戦以降の「平和的台頭」期を「1.0」とする。アメリカや日本を始め世界からの援助を受けて発展してきた「良い子」の中国がこれに当たる。しかし、リーマンショック後、世界の経済構造が変わり『世界の工場』として注目を集め出すと、「金は力なり(Money talks)」を信条に、力で世界秩序を破壊し始める。これが「悪い子」の中国で、「2.0」になる。しかし、中国が『世界の工場』と言っても、しょせんは『組み立て工場』である。中国が傲慢になればなるほど「経済力」と「国力」の乖離が目立ち始め、ついには経済の低迷が隠しようもなく露見し始めた去年(2015年)あたりからが「3.0」。譲歩とか後退はしないまでも、力攻めを少しトーン・ダウンしてきた状態である。ドブにはまって動けなくなったジャイアン状態だ。
 先日読んだ『中国2015』もそうだったが、パンダ・ハガー(親中派)だった米国人の多くが、ようやく中国の『韜光養晦(とうこうようかい)』に気付いてくれたようだ。まぁ、どちらの著者も、太平洋戦争(正しくは大東亜戦争)中の支那を、「大日本帝国からの侵略と戦い、共産主義を理想に新しい国家づくりに励んでいた」みたいな錯誤を残しているのは御愛敬だが……。
 そして、タイトルにある「4.0」だが、これはこれからの中国に対する著者からの提言で、スプラトリー諸島からの撤退や中国の民主化が唯一の解決策としている。もちろん、それがあり得ないと言うか不可能であることを著者は承知している。だから、ドン詰まりでトっ散らかった中国が不測の行動に出たときに日本がどうすべきかという提言で締めくくられている。
 たとえば、中国が尖閣に乗り込んできたとき、日本は躊躇なくこれに自力で対処せねばならないとしている。日米安保で保障されているアメリカの援助は、本土への攻撃の場合であり、人の住まない離島の領土問題は安保の対象外である。故に、それが出来るための「ソフト」作り、すなわち法整備や世論形成が必要だ、としている。
 至極ご尤もで、耳が痛い。まったくもってその通りです。
 ボクにとってはそれほどの真新しさはなかったが、戦勝国アメリカの論理が鼻につく部分もあったが、戦略論という視点からの分析は読みやすく楽しめた。
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辰之介

Author:辰之介
映画ファン歴40年。
映画やドラマを観る日本人の審美眼を真剣に憂える。

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