『習近平暗殺計画』

 つまらない本を買ってしまった。本屋で手に取ることもなく、新聞の広告文句に釣られ、アマゾンでポチッとやってしまった。後悔しきりである。冒頭の数章、中を所々つまんで数十ページ、こんだけ読んでお終いだ。税込1728円。あぁ、もったいない!
 筆者(加藤隆則氏)は、本書のために読売新聞を退社した人物。10年間を北京特派員として過ごたらしい。帰国間際、タイトルにある暗殺計画があったことをスクープしたにも関わらず、掲載を拒否され、辞表を提出し、その記事を『文藝春秋』に載せてもらったとのこと。そんな経緯を囁かれると、タイトルも含めて読んでみたくなるのが人情だ。まんまと騙された。
 まぁ、ご本人が主張するように『世紀のスクープ』なのだろう。あまりのスクープに怖気づいて自主規制してしまう大手新聞社やマスコミは腰抜けなのだろう。ご本人が否定しているように、大手マスコミの抱える問題を暴露しているわけでも、己の自慢だけでもないのでしょう。はい、はい、御説ご尤もでございます。

 日本人は世界で唯一の性善説に依って立つ民族だ。旅行で行っただけでもそうなのに、仕事や留学で暮らしたりなんかしてしまうと、その土地を好きになってしまう。その土地の良いところばかりを見てしまう。東郷和彦のような外交官はその典型だ。
 しかし、外交官もジャーナリストも、日本人なら日本の国益にかなう仕事をしてほしい。しかし、『国益』などという言葉を口にすると、すぐに「戦争をする気か!」と頭に血を上らせる左巻きな御仁が矢鱈めったら多いから始末に負えない。国益を追求したぶつかり合いの果てに戦争があるという論理らしいが、しかし、どこの国の外交官も特派員も、自分の国のため、母国の家族や同胞のために仕事をしているのである。どうして日本人だけが、それをやると戦争になるのか?
 すべての国の国民が、性善説の日本人のように、平和を愛し公正と信義の信頼を寄せられる国民であれば問題はない。しかし、世界は性悪説で出来ているのである。ギリギリの折衝が必要になる交渉の場は、特に性悪説の独壇場だ。お人好しの日本人は性善説でいるせいで、支那や朝鮮からさんざ煮え湯を飲まされてきたではないか。
 そんな当然の認識を、大手新聞社に辞表を叩きつけたジャーナリストは見失っている。すっかりパンダ・ハガー(パンダを抱く者=親中派)になっているのだ。確かに、ボクは中国に暮らしたことはない(仕事でトータル1週間くらいいたことはある)。もちろん、中国語なんか喋れない。もっとも「ニーハオ」や「シェイシェイ」さえも、ちょっと地方に行ったら通じないような中国語(標準語)など、使えたところで無駄ではないかとさえ思う今日この頃である。それに、傍目八目という言葉もある。傍から見ているほうが良く分かることもある。
 個人的なことになるが、とある知りあいのお嬢さんが最近婚約したのだけれど、その彼氏というのがどうもパンダ・ハガーのようで心配なのだ。その彼氏も紹介していただいたのだが、その彼は嫉妬する気も起らないほどのイケメンで、背も高く、地方ではあるが某国立大学を主席に近い成績で卒業し、とある総合商社に就職が決まっている。で、在学中に1年間だったか2年間だったか上海に留学していて、何語か分からないが中国語が堪能らしい。だから、就職したらおそらく上海支社に行くことになりそうだと言うのだ! 上海と言えば、昨年の8月に化学大爆発があった、あの天津に近い。そもそも、上海どころか支那という国そのものが、ヘタをすれば年内にも内乱が起こるんじゃないかと、(希望的)予測をしているボクとしては、そんな所に新婚の彼女を送り出したくないのである。しかも、しかも、輪をかけてボクを不安にさせるのは、パンダ・ハガー彼氏の支那認識が歪きわまりないのだ! 思わず我が耳を疑ってしまったのだが、その彼氏曰く、
「中国は世界一貧富の格差がない国です」
 なのだそうである!
 経済音痴のボクには、ジニ係数がどうのと難しい理論や理屈は語れないが、そんなボクでも知っている。共産党一党独裁の共産主義国家の支那ほど貧富の格差が激しい国はない!
 彼こそは、ボクが目の当たりにしたリアル・パンダ・ハガーであった。彼女の結婚を祝福してあげたいという思いは強いのに、心配で心配で心配で仕方がないのである。

 本書を全部読み切る気力はない。ざっと目を通した感じでは、パンダ・ハガーに過ぎない自称支那通ジャーナリストによる支那擁護論のように思えてならない。著者・加藤氏の言葉の端々に、「集金兵」失礼、習近平へのリスペクトを感じてしまうのである。読んでいて、何とも薄気味の悪い違和感がある。確かに、この著者が支那に向かった10年前と今とでは、日本の対支那感情が激変しているのだから、浦島太郎としては元に戻りたいと思う気持ちも分からないではないのだが……。

 ついでになってしまって申し訳ないが、もう一冊、最近途中読みで止めてしまった本がある。遠藤誉氏の『毛沢東 日本軍と共謀した男』である。
 遠藤女史は、1941年の中国生まれ。国共内戦を経験して53年に帰国したとのこと。毛沢東の生い立ちから読み解き、毛が犯した数々の悪行を紹介しているのだが……、遠藤女史がその知識を得たのは、蒋介石のお陰というのが結論なのである。片一方の大嘘吐きのお陰でもう片方の大嘘には気付いたが、そもそもの大嘘吐きの大嘘には気付いていないのである。もう、ほとほとナンマイダなのである。
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辰之介

Author:辰之介
映画ファン歴40年。
映画やドラマを観る日本人の審美眼を真剣に憂える。

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