サウルの息子

☆☆ (一見の価値あり!)

 アウシュビッツの収容所で、大量虐殺されたユダヤ人の死体を処理するために働かされたユダヤ人捕虜の特殊部隊『ゾンダー・コマンド』を描く。
 主人公のサウルは、殺された死体の中に(見つけたときはまだ息があった)息子を見つけ、その死を弔ってやろうとする。その姿が軸になっているのだが、収容所内には捕虜たちのクーデター作戦も水面下で進行していて、サウルの行動で作戦の遂行が露見の危機に晒されたりする。サウルの気持ちは重々分かるが、いささか利己的な行動に見えてしまい、今一つ感情移入できない部分もあった。
 そんなプロットの賛否はともかく、この作品で描かれている『歴史的事実』と『表現技法』は議論の余地なく凄まじい。この作品はカンヌのグランプリとアカデミー賞の外国語映画賞を受賞したわけだが、この2点への高い評価に負っていることは間違いあるまい。
 まず『表現技法』だが、カメラはほとんどサウルのバスト・ショットかアップで押し通される。もちろん狙いであろうが、画角も今時珍しいスタンダード・サイズなので、画面のほとんどはサウルの顔か後ろ頭だ。背景や状況は画面のわずかな隙間にしか写りこまないし、その写りこみで説明していく。ところが、カメラの絞りを開放気味に照明も落として撮影しているのであろう、視写界深度が極めて浅く、写り込みの状況描写はピントがボケボケなのだ。そのピンボケな中で陰惨極まる虐殺が展開するという描き方である。チラリズムと観る者の想像力でホロコーストの残虐性を描いていくのである。
 そして、『歴史的事実』についてである。
 が、何故か、ボクは敢えて穿った見方をしてしまった。大きく2点ある。

 まずは、やはり日本への言われなき誹謗中傷である。
 日本とドイツは第2次世界大戦時に同盟を結んでいた敗戦国同士ということで、どういうわけだか日本もナチスの悪行に連座させられる傾向にあるのである。(「どういうわけだか」と書いたのは皮肉です。)ドイツは日本と同盟を結んでいながら、支那に武器を供給したりして日中戦争を長引かせる一因になっていた、その程度の同盟であったにも関わらずである。ところが、そもそも日本軍にはナチスのような悪行を働いた史実がない。にもかかわらず、アメリカは日本に対して、ドイツに対して行った以上の蛮行を働いた。非武装地域の市民をターゲットにした都市空襲や原爆実験などがそれである。アメリカが働いたそれらの蛮行を正当化するためにも、日本にはナチスと同等の、もしくはそれ以上の蛮行を働いたことにしなければならず、結果、ありもしなかった日本軍の蛮行が捏造されてしまうのである。朝日新聞の創作でしかない事実無根の『従軍慰安婦』や、本当は中国軍が自国民に対して行った虐殺なのに日本軍がしたかのように喧伝されている『南京大虐殺』などは、その好例である。かてて加えて、国際的な評価や賞賛を欲しがる日本人がマスコミを中心にやたらと多いという厄介な問題があり、そんな日本人自らが嬉々として捏造と広報に精を出しているのだから始末が悪い。
 この映画のようなナチスモノを観るにつけ、そんな言われもない誹謗中傷が日本国内で巻き起こるのではあるまいかと勘繰ってしまう、今日この頃なのである。

 2点目は、誤解のないように説明するのが難しいが、ドイツ人への微かな同情である。
 もちろん、ユダヤ人虐殺のホロコーストは史実であり、ナチスの行為は許されないことなのだが、この手の作品を観ていて、時に疑問に思うことがある。それは、ナチスの党員すべてが何の迷いも良心の呵責もなくユダヤ人を殺していたのだろうかという疑問である。その割合は分からないが、一人や二人は、もしかしたら少なからずの人数が、大勢に逆らいきれずに仕方なくホロコーストに加担していたのではないか、と思うのである。いわゆる戦争アクション映画であれば、悪役のナチスが無個性の画一的なキャラクターとして描かれていても大して気にはならない。だが、ある程度以上のリアリティが盛り込まれている作品であれば、あるいはそんなナチス党員が描かれることがあっても良いのではないかと思うのである。もちろん、上映時間の尺の都合もあるわけだし、放送法で決められているわけではないのだから対立意見も平等に取り上げられなければならないわけではないが、たまにはそんな映画も観てみたい気がする。そういえば、ポランスキーの『戦場のピアニスト』に、多少の温情を表すナチスが一人出てきたが、それ以上は思いつかない。まだまだ己が不勉強なだけか?
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辰之介

Author:辰之介
映画ファン歴40年。
映画やドラマを観る日本人の審美眼を真剣に憂える。

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