『帰ってきたヒトラー』

 現代にタイムスリップしたヒトラーが物まね芸人に間違えられ、テレビで当時のまんまの主張をしていると、正鵠を射ていると絶賛され人気スターになっていく。
 タイムスリップものと括ると珍しくはないが、タイムスリップに理由付けを何もせず、ただポンとヒトラーを現代に置いたところは潔くて面白い。それに、ピーター・セラーズとハル・アシュビーの遺作となった『チャンス(原題;Being There)』を思い出させる設定に最も惹かれた。『チャンス』は、知的な障害のある庭師のチャンシー・ガーディナーの善意の発言を、周囲が勝手に良いように解釈して大統領候補にまで祀り上げていく話なのだが、昔のまんまのヒトラーの発言が現代にも通用し、しかも絶賛されるという設定は、聞いただけでもなるほどと膝を打ちたくなってしまう。プロットを聞いただけで見たくなる作品だ。
 だが、結果から言うと、もっと笑えても良かったのではないかと思った。ボクの期待が大きすぎた部分は否めないが……。
 作品中、所々にヒトラーのナレーションが入る。しかも、後日、客観的に自分を見ているようなナレーションだ。これに少なからぬ違和感を感じたりしたが、基本的には脚本は良くできていたと思う。ヒトラー役の俳優はクスリとも笑わずヒトラーになりきっていたし、その演技方針で間違いないと思う。たぶん、カメラとか編集とか演出の問題なのだろうと思う。つまり『間』の問題だ。コメディー映画は、言葉の違いなどもあって、この『間』をつかむのが難しい。
 自分でもシャキッと理由を言うことができないのが歯がゆいのだが、なんかテンポが悪い気がする。原作は未読だが買ってしまってあるので、それを読んでから、ビデオ化されてから、もしくはWOWOWで改めてまた見てみたいと思う。何が良くなかったのか、問題意識をもって勉強のつもりでもう一度見直してみたい。

 ところで、
 イギリスではユーロからの離脱か残留かを決める国民投票が始まったが(6月23日)、争点となる大きな項目の一つが移民問題である。ところが、『移民』と言えば、ドーバー海峡で守られているイギリスよりも陸つづきのドイツの方が頭を痛めている問題だ。ナチスによる民族浄化を推し進めた贖罪もあり、寛容に移民を受け容れなければならないお国事情もあったし、そもそも『安い労働力』として多くの移民を利用してきたからだ。そのおかげもあってユーロで一番の稼ぎ頭になっているドイツだったが、フォルクス・ワーゲンがあの体たらくで、堅調だった経済にも陰りが見え始め、ちぃとばかり状況が変わり始めた。更には、移民が増えれば犯罪も増えるというわけで、沖縄の基地問題と同じ発想で、移民はすべて犯罪者だから誰もかれもみんな出て行けとなっている。
 原作は2012年の発表らしいが、映画は2015年の公開で舞台設定は2014年となっている。移民問題も盛り込まれていた。長く深く根付いた問題なのだろう。ドイツではタブーであろうユダヤ人ジョークなども盛り込まれていて、このへんの攻めの姿勢は高く評価したい。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

辰之介

Author:辰之介
映画ファン歴40年。
映画やドラマを観る日本人の審美眼を真剣に憂える。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる