『シン・ゴジラ』

 東宝の『ゴジラ』と言えば、大映の『ガメラ』。平成になってから角川映画で作られた『ガメラ』シリーズは、『怪獣映画』というよりも『SF映画』として高く評価されている。これは、脚本家に伊藤和典を迎えたことに勝因があるとされた。伊藤氏とは、押井守とのコンビで『うる星やつら』や『攻殻機動隊』などを手掛けたアニメ畑の人だ。斜陽著しい日本映画業界(興行的には上向きだが内容的には全くの反比例)で才能のある人材はアニメに流れている。プロデューサーとして非常に賢い座組み作りだったと言える。おかげで、『平成ガメラ』はアニメオタクを中心に高い評価を得た。もっとも、ボクにとっては『攻殻機動隊』と同様、消化しきれずに終わってしまったが……。
 で、先日。平成の今上天皇陛下が生前退位のご意向をお話になられる前日に、『シン・ゴジラ』こと『平成ゴジラ』を観た。正しくは平成になってから作られた『ゴジラ』は、先に数本あるみたいではあるが……。
 宮崎駿が引退した今、アニメ界のトップと言ってよいだろう庵野秀明が、その『平成ゴジラ』の脚本であり総監督を務めた。『風の谷のナウシカ』の巨神兵や『エヴァンゲリオン』の実績でアニメオタクの信頼も篤い。実際の監督は樋口信嗣だが、直近の『進撃の巨人』でアニメオタクの全てを敵に回したこともあり、宣伝的には抹殺されていた。が、まぁ、これはどうでもいい。
 かくして、庵野秀明による『平成ゴジラ』は、アニメオタクたちの支持を得た。『怪獣映画』でもなければ『社会派映画』でもない、まさしく『SF映画』として。そして、『軍事シミュレーション』としても。
 そう、今回の『平成ゴジラ』は、もし巨大怪獣が東京に現れたら自衛隊はどうするか? その巨大怪獣は体内で核融合を起こしていて、メルトダウン寸前になっている。まるで動く福島原発状態なのだが、それを目の前にして日本政府はどう対応するか? という想定のもとで、そのシミュレーションを再現ドラマ風に映像化していると解釈するのが正しい鑑賞方法のようだ。
 膨大な数の出演者や、膨大な量の台詞や字幕は、何度も劇場に足を運んでしまったり、何度も何度もDVDで見直したがるオタクたちがいかにも喜びそうな仕掛けである。しかし、オタクにあらざる身にとっては、アニメ(特にジャパニメーション)の画作りやカット割りや編集をそのまま実写映画に持ち込んだ演出は、違和感ばかりで画面への集中力を阻害されるばかりだった。
 単なる怪獣映画のなれの果てのようになっていたギャレス版『ゴジラ』よりも断然良かったという声をよく聞くが、ボクにはどっちもなしだ。石原さとみのコメディエンヌとしての好演は認めるが、他に拾えるシーンは思い出せない。
 あ、そうそう。その石原さとみが『ゴジラ』の命名者になるのだが、日本人学者の残した文献から『呉爾羅』の文字を見つけて、まず『Godzilla』と英語発音で命名する。その英語発音から、日本語発音の『ゴジラ』になるという手続きを踏む形になっている。つまり、『平成ゴジラ』の原文は英語なのであるとした設定が面白いと思った。と言うのも、まず最初に『大日本帝国憲法』があり、それをアメリカが捨てて別の憲法を英語で書き、それを日本語に訳して新しい憲法にした。その工程に似ているところが面白いなぁと思ったからだ。まぁ、そこまで考えて作ってはいないと思うけど……。

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辰之介

Author:辰之介
映画ファン歴40年。
映画やドラマを観る日本人の審美眼を真剣に憂える。

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