『ヒトラーの忘れもの』

 原題は『Land of Mine』。スクリーンにこう映し出された時、ボクは『わたしの国』とか『祖国』と意訳して観ていた。冒頭、ベルギー人の軍曹が捕虜になったドイツ兵士の列に殴りかかり、「おれの国から出ていけ!」と罵っていたこともあり、てっきりそういう意味だと思っていた。ヒトラーの『わが闘争』も原語は『マイン・カンフ』なので、そう信じて疑わなかった。が、後で調べてみると、『mine』には『炭鉱』の意味があったし、そもそも『地雷』の意味があった。『マイン・カンフ』も調べてみると、『Mein Kampf』で綴りが違っていた。(ちなみに、ネットで調べると、『Under Sandet』という原題表記もあった。ベルギー語なのかドイツ語なのか、『sandet』の訳が見つからない。『砂』だろうか?)

 第二次世界大戦直後、ベルギーの海岸線にナチスが埋めた200万個以上の地雷をドイツ軍兵士に回収させる。その多くが15歳から18歳の少年兵で、従事した数千人の半分近くが死亡したり負傷した……、という史実を基にした作品。
 いつドカンとくるか分からないのが地雷。監督の演出力の見せどころであり、緊張感があふれ、ついつい肩の凝ってしまう映画だった。
 物語の展開上当然でもあるので少々のネタバレはさせていただくが、もちろん地雷は何回か爆発する。もちろん少年の何人かが死ぬ。この少年たちを冒頭の鬼軍曹が指揮する。食料も与えず休みもとらせず、まさしく鬼の軍曹……なのだが、やがて情にほだされていく一面が現れるのだ。鬼軍曹と少年兵が冗談を言って笑いあったりするくだりもある。
 ドイツ兵も少年兵だからという部分もあるのかもしれないが、(展開として拙速すぎる部分も感じなくはなかったが)そんな心の通う日常が描かれている点が特に素晴らしい。
 近年になってからのことではあると思うが、ドイツ軍の描き方が『リアル』に近づいてきていると感じる。少なくとも型にはまったステレオ・タイプではなくなってきている。人間味を加えたドイツ兵が登場するようになってきた。以前なら、ナチスの描き方と言えば、人間性などはゼロだった。ただただ機械的にユダヤ人を殺し、連合国相手に大砲をぶっ放すだけだった。ショッカーの戦闘員並みに情緒も知性もなく描かれるばかりだった。
 戦後も70年以上が経ち、当時のドイツやナチスに対する正しい検証や反省がされるようになってきた気がする。もちろん、ヒトラーという絶対悪があり、それが揺るぐことのない軸足となっているおかげなのかもしれない。そして何より、ベルギーだけでなく米英仏などの連合国が実際にドイツと激しく戦った事実があるからだろう。
 翻って、日本軍に関してはいまだに定型のままなのは(正しい検証が行われる兆しすらないのは)、ヒトラーのような絶対悪が『実際には』存在していないし、日本は支那や韓国とは戦争をしていないからだろう。
 GHQによって太平洋戦争と言い換えさせられた『大東亜戦争』の本質は、白人支配の帝国主義に対する有色人種の独立戦争であったわけだし、そもそも日本軍には『絶対悪』など存在しない。軍部とか天皇をソレにしようとする洗脳政策(WGIP)もあったが、今なお圧倒的な効果が残っているとはいえ、幸か不幸か朝鮮戦争のおかげで不徹底に終わったため、少数派ではあるがボクのように洗脳から解放された人たちもいる。大東亜戦争に関しては、戦勝国の側にあまりにもたくさんの不都合な真実があるため、正しく歴史を検証しようとすることができないでいるのが現状だ。
 そして、支那と韓国だ。大東亜戦争時に日本軍が現在の支那大陸で戦った相手は蒋介石が率いる国民党であり、その他多くの軍閥だった。現在の中華人民共和国の主体である共産党は常に逃げまくっていたわけだし、戦わずに力を蓄える作戦をとったからこそ戦後の国民党との内乱に勝利でき、今の中国を建国できたわけだ。韓国に関しては何をか言わん。戦った相手どころか、日本の一部だったではないか。日本が負けるやいなや勝った側に寝返るいつもの軽薄さで戦勝国のふりをしているだけだ。これまた歴史を検証しようとすると不都合な事実ばかりが露見してしまう。
 日本軍の描写と言えば、南京大虐殺のような蛮行や歩兵に対する鉄拳制裁、特攻隊の強要などが定型となっている。しかし、GHQが焚書にした図書の中には、部下を思いやる上官の優しさや思いやり、のどかさや笑いもあった軍での生活が描かれた作品もある。
 戦争は善悪で勝ち負けが決まるわけではない。しかし、常に歴史を書くのは善でも悪でもなく勝った側だ。

『Land of Mine』マーチン・ピータ・サンフリト監督、2015年、101分、デンマーク・ドイツ
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辰之介

Author:辰之介
映画ファン歴40年。
映画やドラマを観る日本人の審美眼を真剣に憂える。

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